「メルティブラッド」のオープニングの歌詞


「メルティブラッド」のオープニングの歌詞について

 知らない人のために言っておこう。「メルティブラッド」と言うのは同人ソフトだ。ジャンルは対戦格闘ゲームだが、ストーリー的には「月姫」、「歌月十夜」の続編にあたる。(「月姫」はアダルトノベルゲーム。「歌月十夜」はその続編。)

 で、このコラムはその「メルティブラッド」のオープニングムービーのバックで流れているボーカル曲の歌詞についての考察である。後半、「月姫」のストーリーを知っている人にしか分からない話になってしまうが、ご了承いただきたい。

・その歌詞

 そもそも、僕は耳があまり良くなくて、と言っても小さな音を聞く能力は人並みにあるのだが、言葉を聞き分ける能力が貧弱で、日常会話の中でも相手が何を言ったのか分からなくて聞き返してしまう事がよくある。そんな調子なので、歌を聴いてその歌詞を聞き取るのも苦手で、この「メルティブラッド」のオープニングの歌詞もなんて言っているのかよく分からなかった。
 そんなわけで友達に、「メルティブラッドのオープニングの歌詞ってどう聞こえる?」とメールを出した所、一人がサントラを持っていて、正しい歌詞を教えてくれた。以下の考察では基本的にその歌詞を対象にする。次に引用しておく。ただし、2番以降は今回は対象外とし、1番の歌詞のみを引用する。

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碧の森 目の覚ます記憶
胸のケモノが 闇の中あざ笑うよ

巡る意思の中・・・ 傍にいて白き人よ
輝きをもらたして 今すぐにこの渇き潤して

この目に映るのは 遠い日の真夏の陽炎
空には血潮に***(注1) 月夜

はるかな時を越えた 貴女の命を愛した
今夜だけは 譲れない
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(注1)の部分は、僕にメールしてくれた友人が読めなかったので分からなかったのだが、曲を聴いた限りでは、「たぎる(滾る)」で間違いないだろう。


・考察


 さて、自分で聞き取っていたときからうすうす思っていたのだが、どうも文法的に変なところがある歌詞だ。一行目から見ていこう。

「碧の森 目の覚ます記憶」

 すでに分かりにくい。「目を覚ます」なら分かるのだが、そうでなくて「目の覚ます記憶」と言うのはちょっと変だ。何が言いたいのだろう。どうして「目を覚ます」ではないのだろうか。何か深い理由でもあるのだろうか?

 もっともここの部分は、上記の歌詞が正しくないのかもしれない。歌詞を聞いた限りでは、「覚ます」と「記憶」の間に一音節あるように聞こえるのだ。また、「森」と「目の」の間にも一音節あるように聞こえる。これがもし、「碧の森で 目を覚ますの記憶」が正しいと言う事なら、これでも少し違和感がある文章だが、文法的に間違いではない解釈が可能になる。つまり、「記憶」に対して、「碧の森で、目を覚ますの?」と聞いているのだと解釈するのだ。言い換えると、「記憶よ、お前は、碧の森にて目覚めるのか?」と言う感じだ。違和感はあるが、文法的問題はない。
 次の行を見てみよう。

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「胸のケモノが 闇の中あざ笑うよ」

 抽象的な意味で、胸の中にケモノを飼っている人と言うのはよく居る。少なくともフィクションの世界では。僕が今すぐに思い浮かぶのは「餓狼伝」の主人公、丹波文七だ。夢枕獏の原作小説は読んだ事なくて、板垣恵介の漫画でしか知らないんだけど。丹波はライバル堤城平との(格闘技の)試合で、途中からは攻撃を受けるたびに自分の中のケモノが覚醒しようとしているのを感じ、そして大打撃を食らったのがきっかけでついにケモノが覚醒してしまう。 ケモノが覚醒した丹波は、絶対にもう起き上がれないと思われた状態からすぐに起き上がり、必殺技「虎王」で堤を瞬殺してしまうのだった。
 さて。「月姫」世界の主人公、我らが遠野志貴君はその様なケモノを飼っていただろうか?
 これはちょっと微妙だ。それに相当する物はあると言えるだろう。だが、それはケモノだろうか。
 そう、遠野志貴は「七夜」の血を引いている。それは超能力によって魔を退ける退魔の一族。彼らは人外の存在(吸血鬼など)に対して強い殺害衝動を持つ。

・・・続く。
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